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ブレインワイズ 7章

「7章 表象する脳」です。

脳は表象するか
表象について考える前に、なぜ単なる刺激ー反応系を考えるだけでは不十分なのかをまず考えてみる。PackardとTeatherはラットの空間認識能力を調べた。はじめに十字型迷路の上半分を隠してT字型にし、T字の一番したの部分にラットを置く。餌は常にT字路を左に曲がったつきあたり置いておき、それをラットに学習させる。テストでは、T字から十字に戻して、ラットのスタート位置を十字の一番上の部分にする。餌の位置は変わらず、十字路で右に曲がれば餌がある。左に曲がるという条件反射を学習していたとすれば、今度も左に曲がって餌をもらえない。空間的地図として餌の位置を学習していたならラットは右に曲がって餌にたどり着く。結果は、ラットは右に曲がった。このことから単にラットが条件反射を学習していなかったことがわかる。また、O'KeefeとDostrovskyはラットの海馬にラットが特定の場所に来たときにのみ活動する「場所細胞」があることを見つけている。PackardとTeatherと実験で、海馬が損傷しているラットは学習前後いずれも左にしか曲がらなかった。
Kanizaの図形に見られる主観的輪郭線や、ネッカーキューブ(Necker Cube)からも「知覚とは単に外的世界を受動的に取り込んでいるのではなく、脳の能動的な活動である」ということが伺える。

表象の理論への道しるべ
脳は進化の産物であるので、空間的表象、運動的表象、知覚的表象のいずれについても、小児と成人の間に、人間と動物の間に連続性がなければならない。「そして、表象についてのいかなる理論も人間の言語が説明できるものでなければならない」。

神経系におけるコード化
表象を神経細胞の活動で説明するには次の2つの問題をクリアしなけばならない。

 (1)単一神経細胞は、情報をどういう形で貯蔵しているか
 (2)表象は、神経細胞の集合の中でどのような形をとっているか

(1)についは、スパイクの平均発火頻度という説が有力であるが、その他にも、スパイクの相対的タイミング、スパイク間のインターバル、インターバル中におけるスパイクの特定のパターン、刺激後の第一スパイクの持続などがある。
(2)については次の2つ仮説がある。

(a)ローカルコード仮説
ある一つの神経細胞がある特定の対象をコードしている(例えばあるおばあさんにだけ反応する神経細胞など)という「一対一」対応仮説である。

(b)ベクトルコード仮説
複数の神経細胞が複数の対象をコードしているという「多対多」対応仮説である。(ベクトルコードは既に4章の「逆スペクトル問題」で紹介されている。)ベクトルコードは非常に経済的である。5つの神経細胞が4つの活動レベルを持つとして、ローカルコードは4x5=20通りのパターンしか表象できない。一方、ベクトルコードは、5の4乗=625通りのパターンを表彰できる。さらにチュー二ングカーブがオーバラップしていれば精密な表象が可能になる。ベクトルは空間(パラメーター空間)を構成する。そして空間を考えることで、空間内の複数の点の相互の距離が比較できる。特に、類似という関係をパラメーター空間を用いることによって示すことができる。

顔認知の人工神経ネットワーク
Cottrellがフェイスネットという顔を認識する3層構造をもつ人工ニューラルネットワークを作った。第一層は入力層で64x64のピクセルが入力される。第二層は中間層で80個のユニットにより顔空間を構成する。第三層は出力層で8ユニットによって、顔か否か、男か女か、誰なのかを答える。フェイスネットは11人の顔の写真64枚と顔以外の写真64枚によって学習された。学習後、第二層のユニットがどの刺激を好むか調べてみると、鼻や口などの入力刺激の一部分ではなく、入力刺激全体に関連していることがわかった。共同研究者のMetclfeはこれを「ホロン」とよんでいる。ホロンは学習で用いられた特定の写真に対応しているのではなく、いわば顔的なものに対応している。
「フェイスネットの情報貯蓄の実体はユニットの連結強度のパターンである。したがって、表象を理解するためには「強度空間」について考える必要がある」。

意味論から認知的意味論へ
「自然言語の曖昧さに内在する問題を重視したTarskiは、高度に形式化された人工言語に真理を求めた」。言語から出発する意味論、つまり形式的意味論である。形式的意味論からは多義、背景知識、類似、暗喩、前提の共有、現在の状況など形式化できないものが除去された。形式的意味論の最大の問題は思考や表象は言語の形をとっているという前提であった。しかし、言語の学習には表象を必要とする。表象が言語の形をとっているならば、言語の学習には言語が必要となるという矛盾が生じてしまう。
それに代わって、認知的意味論という新しいアプローチが生まれた。認知的意味論は次の4つのことを指摘している。
1、形式論理学、形式的意味論は自然言語の本質から離れたものである
2、言語の本質はコミュニケーションの道具で、表象は副次的なものにすぎない
3、表象の本質が関わるのは、カテゴリー化、予測、実世界での活動など
4、表象は形式論理学に類似の直列処理でなく、(神経活動のような)並列処理である。

カテゴリーの形成
表象という機能に着目する限り、パラメーター空間にできた仕切られた部分(サブスペース)の全体としての構成が重要である。それぞれのサブスペースは、例えば女性の顔や男性の顔に関する領域だったりする。カテゴリー(動物、野菜、等)についてのサブスペースは個人によって多少ことなっても類似している。
表象の構成はその生物の生存に密接に関連したものとなっている。そして、表象の構成が似通っていてはじめて、コミュニケーションが可能になる。
「自分のために必要な知、という意味で、表象は地図に似ている。地図は、自分の行動のために必要なものである」。

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2006.05.06 | | Comments(0) | Trackback(0) | ブレインワイズ

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