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ブレインワイズ 8章

ブレインワイズのレビューも今回が最後、
「8章 学習する脳」です。

8章のテーマは「知はどこから来るのか」。7章ではすでに獲得された知がどのような神経基盤、構造を持っているかだったが、8章はその知がどのように獲得されるかについてである。

従来、先天的な知と後天的な知があると考えられてきた。しかし、分子遺伝学の進歩によって、そのような二分法は適切でないことがわかってきた。なぜなら、学習は遺伝子と環境の両方の影響を受けているということがわかったからである。

神経系の情報貯蔵
学習はどのように起こるのか。それはシナプス結合強度の変化によるものだ。つまりそれは前シナプスニューロンが後シナプスニューロンを発火させる確率の変化である。これを1949年に心理学者のヘブが次のように記した:

「神経細胞同士の関連した活動があれば、シナプスの結合は強化され、関連した活動がなければ弱化される」(ヘブの法則)。

神経細胞の変化は、発達早期においてはヘブの法則に従わない可塑性があるらしいが、生後の学習の多くはヘブの法則に従うという。

ではどのような学習のモデルを研究するのが良いのか。人間の行っている複雑な学習を研究するのが良いのか。いや、動物で実験できる単純な型の学習から始めた方が、神経細胞レベルの研究を行えることもあって、結局近道となるはずだ。そもそも、いかに洗練された学習といえども、単純な学習から変化したものにすぎないのは明らかだ。

甘い蜜ー正の強化学習とドーパミン
ミツバチは、効率よく最小の努力で最大の蜜(報酬)を得るように行動している。これを正の強化学習のモデルとしてRealが研究を行った。Realは黄色と青色の造花を作り、すべての青色の花に2マイクロリットルのブドウ糖を入れ、黄色の花の3分の1には6マイクロリットルのブドウ糖を入れ、のこりの3分の2の黄色の花には何も入れなかった。つまり、黄色の花から報酬が得られるどうかは不確実であるようにした。この状況ではミツバチは、当初は色の区別なく次々といろんな花にとまったが、すぐに85%は青色の花にとまるようになった。
黄色の花のうちの3分の1のブドウ糖を6マイクロから10マイクロリットルに変えて同じ実験をすると、ミツバチは黄色の花にとまる率がやや高まった。さらに黄色の花の期待値を十分高くすると、青と黄色に同じ確率でとまるようになった。「つまり、ミツバチは報酬のパターンを学習し、行動を変容させているのである」。
Hammerはミツバチの脳内に報酬に関連する神経細胞(vum細胞)を発見した。この細胞は、たとえば、ある特定の匂いがブドウ糖と関連していれば、匂いだけに反応するようになるのである。この細胞はMontagueのシミュレーションにより予測エラーに関連していることが明らかにされた。

サルにも報酬の予測に関連する細胞があることがSchultzによって発見された。この細胞はドーパミンを放出する。ドーパミンは他の神経伝達物質に対する神経細胞の興奮性を調節すると考えられている。この細胞はただ報酬が与えられたときに活動した。そして、報酬の前に条件刺激を出してから報酬を与えるようにすると、条件刺激の直後に反応を示して、報酬の直後には活動を示さなかった。さらに、条件刺激を出して期待される報酬を与えないと活動がとても弱くなった。

陳述記憶と海馬
陳述記録とは、出来事や事実など言葉で伝えることができる記憶のことである。自転車に乗る、ネクタイを結ぶなどの技能の記憶は手続き記憶と呼ばれ、非陳述記憶である。
H.M.という患者はてんかんの治療で両側の側頭葉中部切除の手術を受けた。これによってH.M.は一分前の出来事も思い出すことができなくなってしまった。しかし、幼少の記憶は正常であった。モントリオール神経研究所のMilnerは、H.M.の記憶障害は新しい事についての陳述記憶のみが損なわれており、手続き記憶は正常あることを明らかにした。H.M.は海馬が失われているので、海馬が新しい事物の陳述記録に必要であるという仮説が考えられる。

Morrisはその仮説を指示する実験をラットで行った。色水で満たされた水槽にラットを入れる。水槽の周囲には空間的な手がかりとなるものを置いておいて、水槽の中には水面すれすれのところに小さな台を隠しておく。ラットはその台を探して泳ぐ。健常なラットは何試行か後にはまっすぐ台に向かって泳ぐようになったが、海馬が損傷したラットは台の位置を覚えることができず、何試行後でも探索し続けた。

さらに、利根川進はノックアウトマウスを作ることで海馬のLTP(長期増強)と空間学習の関連を示した。海馬のCA1細胞にNMDA受容体を持たないマウスは、LTPが起こらず空間学習ができなくなったのである。

アリストテレスから自然科学的認識論へ
海馬の損傷実験やニューラルネットワークのシミュレーションが認識論となんの関係があるのか。関係は大いにある。アリストテレスは自然科学的方法論を重視した。哲学研究室で扱われているものだけが認識論ではない。知の本質は何か、それを可能とする脳とは何か。これに挑む科学者の営みを自然科学的認識論と呼ぶできだ。

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2006.05.18 | | Comments(3) | Trackback(0) | ブレインワイズ

コメント

ラットの陳述記憶

ラット語はまだ解明されていないと思うんですが、
ラットの陳述記憶って、どう定義するんですか?
手続き記憶ではないものってことですか?

2006-05-23 火 01:30:13 | URL | しろーと #MhUJ2EIA [ 編集]

初めまして。神経科学見習いのshokou5です。
ブレインワイズのレヴュー、とても参考になりました。神経科学徒必読っぽいですね。
サールの"MiND"は僕も今、読んでいます。レヴュー楽しみにしております。
専門と外れるので、間違っているかもしれませんが、動物の陳述記憶については、海馬が必要とされる種の記憶を「陳述記憶」と操作的に定義しているのではないでしょうか?
そうなると海馬が陳述記憶に必要だ、というのは堂々巡りになるような気がしますが(笑)、研究史的には、人間の陳述記憶に近いものを動物で探していったら、やはり海馬が関わっていた、ということなんでしょうか。

2006-05-26 金 12:08:35 | URL | shokou5 #5QtXIGXc [ 編集]

>shokou5さん
ありがとうございます。
なんとなーく(笑)わかりました。
動物とヒトでは同じ定義とはいかないんですねえ。
定義って難しいですね。

2006-05-29 月 01:28:06 | URL | しろーと #- [ 編集]

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