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フルカラービジョンマウス

遺伝子操作によりマウスには本来備わっていない光色素を持つマウスを作り、色知覚が通常のマウスとどのように違うかを調べた論文が、先週のSCIENCEに掲載されていました。

私たちが色を知覚できるのは、異なる光の波長に応答できる視細胞を3種類持っているからです。短い波長に応答する視細胞はS錐体、中間の長さの波長に応答する視細胞はM錐体、長い波長に応答する視細胞はL錐体と呼ばれています。私たち以外の霊長類も3種類の錐体細胞を持っています。けれども、マウスを含む他のほ乳類は2種類、S錐体とM錐体しか持っていません。そのため、私たちとは色彩感覚がだいぶ異なっているのではないかと考えられています。

この論文ではマウスにヒトのL錐体の光色素遺伝子を発現させて、どのように色を知覚するようになるのかを調べています。その結果、SとMしか持たないマウスは500nmの光(緑)と600nmの光(赤)を区別できなかったのに対し、S、M、Lの三つの錐体をもつ遺伝子改変マウスは500nmと600nmを区別ができるようになりました。さらにもっと細かい波長の違い(たとえば580nmと600nm)も区別できるようになりました。ちなみに、M錐体は510nm付近の光にもっともよく応答し、L錐体は560nm付近の光にもっともよく応答するそうです。

錐体細胞の種類をひとつ増やしただけで異なる色知覚を持ったということは、新しいセンサ(L錐体)をうまく使えるような、普通のマウスとは異なる脳のネットワークが形成されたということです。錐体細胞以外の遺伝子は変えていないので、脳のネットワーク自身に新奇のセンサを活用できるような可塑性が備わっていると考えられます。
このことから霊長類へ進化したときのことを考えてみると、まずはじめに錐体細胞が2つから3つに増え、そのあとで新しい錐体細胞から得られる情報をより上手に利用できる脳内ネットワーク関連の遺伝的変化が生じたのではないか、とのことです。

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2007.03.27 | | Comments(6) | Trackback(0) | 論文の紹介

コメント

マウス色覚の特殊性

通りすがりの者です。マウスってS-opsinの分布が網膜上の領域によって大変不均一です。また、SとLどちらかでなく両方を発現している錐体細胞が多くて、こういう細胞は色覚に役立ちません (JNS 25, 5438-45, 2005)。そのせいかはたまた頭が悪いせいか、色弁別のトレーニング効率が恐ろしく低いです (Vision Res 44: 1615-22, 2004)。素人の想像ですが、ひょっとしたらマウスの色覚の仕組みは我々の色覚とは全然違って、例えば視野の上半分と下半分の明るさを比較することで色を見分けているのかもしれません。Science論文のknockin miceでLを発現した細胞がどのように分布していたのか、他のopsinと共発現していたのか、興味深いところです。

2007-03-28 水 16:57:51 | URL | おが #Son/vfn. [ 編集]

>おがさん

コメントありがとうございます。このSCIENCEの論文では、メスの二つあるX染色体の片方にknock inして、M光色素の遺伝子をL光色素の遺伝子に変えています。ですから、野生型マウスのM-opsinの分布と同じように新しく導入されたL-opsinも分布しているのではないかと思います。
ひとつの錐体で二つのopsinが共発現していても、発現の比率がどちらかに偏っていれば色覚に役に立つと思いますが、どうなのでしょうか?

2007-03-28 水 22:37:39 | URL | yureisoul #SFo5/nok [ 編集]

情報ありがとうございます。X染色体の不活性化を考えるとMとLは相互に排他的な発現をしているはずですね。

>発現の比率がどちらかに偏っていれば色覚に役に立つと思いますが、どうなのでしょうか?

細胞毎に偏りがばらついていれば効率が悪くても色覚に役立つかもしれません。でも複数のopsinを共発現している時点でマウスはまじめに色覚をやる気がないというか、進化の過程で色覚に対する選択圧がほとんど掛かってなかったのだろうと思います。夜行性で木の実や穀物など地味な色の餌を食する習性からいって当然のことかもしれません。

2007-03-29 木 13:18:37 | URL | おが #Son/vfn. [ 編集]

>おがさん

野生型マウスの色覚は、赤緑色盲の人に近いのかなぁと思いましたが、だいぶ違いそうですね。
この研究は他者がどのように物を見ているのかを知る方法を考える上で、大きな示唆を与えてくれると思います。

2007-03-29 木 17:26:28 | URL | yureisoul #SFo5/nok [ 編集]

追記です

さっきyureisoulさんに直に質問されましたが即答できなかったのでここに書きます。

マウスのcontextual fear conditioningは一回の刺激で条件付けが成立します (Nat Neurosci 5: 348-55)。Water mazeなら数十回 (JNS 20: 6694-700)、自然界では起こりそうにないeyelid conditioningでさえ数百回 (JNS 25:2070-80) の試行で充分だそうです。だから色弁別のトレーニングに1万数千回の試行を要するというのは、やはりマウスにとって極めて不自然で困難なことをやらせているんだと思います。著者達が主張するように類人猿の色覚進化の過程を再現したことになるのか私には疑問です。もし「ヒトの顔面皮膚にアデランスで長いヒゲを多数埋め込み訓練を積んだ結果、ヒゲで周囲の情報を探れるようになった」という論文があったら、だから何なんだ、と突っ込みたくなりますよね。そういう疑問です。ただし被験者の脳にバレル構造が生じてたら素直に感心します。

2007-03-29 木 19:03:14 | URL | おが #Son/vfn. [ 編集]

ヒゲでも、、、

本来もっていないセンサを付け加えたら、脳のネットワークがどのように変わるのか、どう感じるようになるのか調べることは悪くない方法だと思います。

ヒゲで周りの環境を調べられるようになったヒトは、ヒゲで物体をどう感じるようになるのでしょう。指で触った時とは全く異なるのでしょうか、似ているのでしょうか。それとも何も感じないのでしょうか。
いつかはヒゲでなんらかの感覚を持つようになるとして、感覚を持つまえにも識別は可能なのでしょうか。それとも何らかの感覚があってはじめて識別ができようになるのでしょうか。感覚を持つ前と持った後では脳のネットワーク構造や活動にどのような違いがあるのでしょうか。

知覚や感覚を知るためにはこのようなアプローチが非常に有効だと思います。

2007-03-30 金 21:42:01 | URL | yureisoul #SFo5/nok [ 編集]

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