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ブレインワイズ 3章 自分とは何か 前半

P.S. チャーチランド著の『ブレインワイズ 脳に映る哲学』のレビューの続きです。

3章「自分とは何か」は、

 1. 自分とは何かとは何か
 2. 身体や自己の内部モデル
 3. 自己表象への道程

からなっています。

3章はちょっと長いので二回に分けます。
今日は「1. 自分とは何かとは何か」です。

1.自分とは何かとは何か
脳が「私を、他の誰でもない「わたし」にしているのである・・・・・・私が私自身について考える、そんなことを可能にする脳とは、いったい何だということになるのだろうか。」デカルトは根源的な自己とは物質的なものではないと考えた。ヒュームはこの考えを推し進め、自己という「もの」があることを証明しようとした。しかし、どうがんばっても証明できず、自己という「もの」は存在しないと結論した。「自分」とは「何か」、その「何か」についてヒュームは答えを出せなかった。
神経科学的な答えは以下のようなものである。思考は脳がする。「自己」を何らかのものであるとする思考も脳がする。したがって「自己」は脳から来る。
また、自己の起源について進化生物学からの答えは、「神経系が、知覚や記憶などを統合して生存協力に勝つために、脳は自己という概念を必要としている」である。
自己という概念には定まった輪郭はなく、様々な能力が乱れた編隊を組んで表れてくるようなものである。場合に応じて編隊の中のどれかの能力を自己と呼ぶのである。そして最も基本的な能力は、行動の目的や知覚や記憶などと運動を協調させることだろう。

自己とは何かという問題は「自己表象のさまざまな能力の集まり」と問い直せる。そして、「そのひとつひとつについて神経系のどの部分が関わっているかという問いを立てることができる」。表象とはなにか。それは何らかの情報に対応する神経活動のパターンである(詳しくは7章で)。何らかの情報とは、ほとんどあらゆるものについてのもので、食物や自分の仲間などだけでなく、自己への表象、つまり自分の知覚、感覚、好み、記憶なども含まれる。

 症例
今までの人生で経験したことの記憶を自伝的記憶という。自伝的記憶こそが、今の自分を決めているように思われる。そして、「自伝的記憶が失われれば、自己も失われるように思える」。しかし、そうではない。ダマジオの症例R.Bがそれを示している。R.Bはヘルペス脳炎によって過去のほとんどの記憶を失った(逆行性健忘)。そして新たなことも40秒後には忘れてしまう(前向性健忘)。しかし、R.Bには自己表象が保たれていた。R.Bは「私」という言葉を使うのである。例えば「いま私はコーヒーを飲みたい」などである。

統合失調症の患者ではR.Bと逆の症状が見られることがある。他人と自分の境界がわからなくなるのである。

左半身が麻痺した右頭頂葉損傷の患者は、左の手が自分のものであるとは認めても、それが麻痺していることを認めない。左手を動かすように指示されると、まったく動かせなかったにもかわらず、動かしたと主張するのである。


自己表象を脳がいかにして構築するかを解く鍵は、動物は動くということに尽きる。動物が、走ったり食べたりするためには、神経系が協調して働かなければならない。そして、そこには情動が大きく関与している。不快な情動は、ホメオスターシスを維持するための行動に駆り立て、快の情動は食事、性行為、安全になったときなどに得られる。「情動とは脳から動物に与えられる指令であり、自己表象にも強く関与している」。


 生きるためのエミュレーター
動物が生存するためには感覚と運動の協調が必要であり、そのためには脳内に身体のエミュレーターが存在するはずだという仮説がある。エミュレーターの役割は身体を適切に動かすためのシミュレーションを行うことである。例えば、目に映った対象に手を伸ばすとき、網膜座標系の位置情報からどのように腕を曲げたら対象に手が届くかという計算(シミュレーション)を行わなければならない。上記のような目標を達成するために必要な運動指令を計算するモデルを「逆モデル」という。しかし、逆モデルだけでは限界があるので、逆モデルと入出力関係が入れ替わった「順モデル」を導入することにより運動の誤差を計算できる。順モデルは、例えば、運動指令が得られたときにどのように腕が曲がるだろうかを計算するモデルである。この逆モデルと順モデルをあわせてエミュレーターと呼ぶ。エミュレーターによって知覚運動変換がスムーズになるだけでなく、オフラインの計画(知覚や運動のイメージ)もできるようになる。オフラインの計画とは、実際に運動することなしに、もしこのような運動をしたらどうなるかという予測をおこなうことである。さらに、エミュレーター(順モデル)からのフィードバックを利用すれば、運動後の知覚系からのフィードバックより速く情報を得ることができる。これは生死をわけるような速い対処が必要となる場面で大きな利点となる。

動いている犬を目を動かして追跡するとき、眼球の動きによる背景の移動と犬の動きを混同することはない(網膜上では犬は止まっていて背景は動いている)。なぜならば脳(エミュレーター)が眼球へ送られる運動指令のコピー(遠心性コピー)を分析しているからだと考えられている。
遠心性コピーを用いていることを示唆するデータがある。眼球を能動的に動かすと眼球と反対方向の運動知覚はキャンセルされる。では、受動的に眼球を動かされるとどうなるか。ヘルムホルツは片目を閉じてもう一方の目の外側を押してみた。そうすると静止している物体が動いて見えたのである。眼球は動くが、脳は眼球の運動指令を出していないので、遠心性コピーはない。したがって外界の動きとして知覚される。
また、スティーブンス(1976)は薬物を用いて眼球を動かす筋肉を麻痺させる実験をおこなった。左に眼球を動かそうとするが眼球は動かない。しかし、主観的には視野が左に動くのである。
他人にくすぐられるとくすぐったいと感じるが、自分でやってもそうは感じない。これについては、遠心性のコピーを得てエミュレーターが「自分が自分自身に触った」と解釈しその感覚をキャンセルするからだと考えれている。ブレイクモアは、被験者がレバーを押すと羽が動いて被験者をくすぐる装置を作ってこれを確かめる実験を行った。ただし、この装置は、被験者がレバー動かしても動かず実験者によって動かされる場合もある。被験者は自分で動かしたのか実験者が動かしたのかわからない。被験者のレバー押しと羽が動くまでに一定の時間差をもうけると、被験者は他人にくすぐられたと感じる。つまり、これは、自分の身体モデルについて時間情報が大切であることを示している。

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テーマ:心・脳・言葉・人工知能 - ジャンル:学問・文化・芸術

2006.02.21 | | Comments(0) | Trackback(0) | ブレインワイズ

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